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赤羽根医院ブログ

おしりから腸が出てきてしまう。実は意外な原因が…

2020.10.11

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皆さんは直腸脱という病気をご存知でしょうか?直腸脱は文字通り直腸が出てきてしまう病気です。どこから?もちろん肛門からです。体の臓器が裏返って出てくる!しかもあんまり痛くもない。
ある意味人体の神秘といえるのではないでしょうか。もちろん病気になってしまっている方にとっては大変不快なことではあります。
この病気はさほど珍しい病気というわけではないのですが、高齢の方、中でも女性に多い病気です。しかし、直腸脱は決して若い人にとっても無関係な病気というわけではありません。なぜなら、この病気は長年の生活習慣の積み重ねによってできるものだからです。
腸が出てくるときは上の図のように腸がくるりとひっくり返って出てきてしまうので真っ赤な丸い玉がおしりから出ているような感じになります。
痛みはあまりないことが多いですが、見た目にはインパクトがありますので見てびっくりして来院される方は多いです。また、直腸が出てきた状態が長く続くと血流が悪くなり、腸がむくんできて、出血したり痛みが出たりします。見た目もより赤みが強くなってくるので、癌と間違えて慌てて来院される方も中にはおられます。もちろん、脱肛したといって来院される方もいます。
直腸脱になると痛みなどは多くないものの、腸が出てくるのを気にして外出を避ける方が多く、生活の質は大きく下がります。また、便漏れや子宮、膀胱などが出てきてしまうなども同時に起こってしまう事があります。
しかも直腸脱は一度なってしまうと薬や生活指導ではなかなか治すことができません。
この厄介な病気、直腸脱はなぜ起こってしまうのでしょうか?また、どの様にすれば防げるのでしょうか?

直腸脱の原因は腸と筋肉のゆるみ

直腸脱は二つの原因によっておこるとされています。一つは直腸粘膜のゆるみです。長い間生きていると便が直腸にたまったりすることや腸の筋肉が衰えてくることなどにより、徐々に直腸の粘膜が緩んできます。もう一つは骨盤をささえている筋肉のゆるみです。骨盤は人間のお尻にある骨で、お腹の中の臓器が落ちてこないように支えているのですが、支えているのは骨盤だけではありません。骨盤底筋群とよばれる複数の筋肉が一緒になって腸や子宮、膀胱など、お腹の下の方にある臓器をを支えてくれているのです。(骨盤底筋体操などという言葉を聞いたことがないでしょうか?)これらの筋肉が緩んだり、弱くなったりしてくるとゆるんで伸びた直腸を筋肉が支えることができず、腸が裏返って出てきてしまうのです。直腸脱の場合は特にお尻をしめる「肛門括約筋」という筋肉のゆるみが大きな原因になります。これについては後でまた解説しますが、お尻を締めるような運動を毎日やっていると予防することができます。

直腸脱とよく似た病気

また、直腸脱によく似た病気として便が出ない原因になることがある直腸瘤や、直腸の粘膜の一部だけが出てくる直腸粘膜脱、子宮や膀胱などが出てくる子宮脱、膀胱脱などもあります。これらはいずれも骨盤を支える筋肉が弱くなるのが原因で、骨盤底筋症候群などとまとめられることもあります。

直腸の部屋 直腸瘤

直腸瘤は直腸と膣との間の壁が弱くなり、そこに便がたまるスペースができてしまう病気です。こちらも骨盤を支える筋肉のゆるみから起こる病気で、便がおしりまで来ているのにうまく出ないという症状の原因になります。


上の図のように直腸の前側に便がたまる場所ができてしまう

直腸瘤になると、直腸の前側にできた空間の中に便がたまってしまう事によって、便がうまく出なくなってしまいます。下剤などで便を軟らかくしたり、下腹部を押してもらいながら排便してもらう事で症状が改善する場合もありますが、ひどい場合には手術を行う場合もあります。症状がつらい場合にはお近くの肛門科にご相談ください。

膀胱脱・子宮脱・直腸粘膜脱

膀胱脱や子宮脱なども骨盤底筋群のゆるみからくる病気です。人間の体は筋肉によって支えられている部分がとても多いので、筋肉がおとろえ、緩むことによって体中のいろんな穴からいろんなものが出てきてしまう状態になるのです。特に女性は出産を経験すると骨盤を支える筋肉が傷ついたり、緩んだりしてしまう事があるので要注意です。子宮脱、膀胱脱については膣にペッサリーと呼ばれる人工物を入れることによって治療できる場合があります。婦人科や泌尿器科などで行っていますので、ご相談ください。
直腸粘膜脱は直腸脱が部分的に起こっている状態です。その名の通り直腸の粘膜が出てきていますが、一部だけ脱出してしまいます。いぼ痔と同じような手術をして治療をします。状態に応じて結紮(ゴムの輪で縛る)や硬化療法(注射をして固める)などの治療を行うこともあります。

直腸脱を防ぐには…

1 便秘やいきみをへらす

直腸脱の原因は直腸粘膜のゆるみと骨盤を支える筋肉の低下です。
腸の粘膜が緩んできてしまうのは特殊な病気などもありますが、多くの場合は排便時に強く、または長時間いきみすぎてしまうことや、腸に便がたまっている(便をしたい状態)で無理に便を我慢している状態を続けていることが原因の一つであるといわれています。もちろん、加齢などによっても腸の粘膜は緩んできます。腸の粘膜のゆるみを避けるには、あまり便意を我慢しないことや、便秘を避けるために繊維質の多い食生活をしたり、運動をして腸を動かすことなどが重要です。もちろん、あまり便秘がひどい場合には何か病気が隠れていることもありますので、消化器内科や胃腸科に相談することが大切です。

2 骨盤底筋体操をする

一度なってしまった直腸脱を手術以外の方法で治すのは難しいのですが、予防する方法はあります。
一つは便秘をさけ、いきみを減らすことです。
もう一つは骨盤を支える筋肉(骨盤底筋群)をきたえることです。これを鍛えるのは直腸脱を予防するだけでなく、尿もれや便もれなどを防ぐうえでとても有効です。また、直腸脱と似た病気である直腸瘤や膀胱脱、子宮脱、直腸粘膜脱なども予防することができます。特に女性は妊娠や出産により骨盤の筋肉が緩んでしまう場合があるので若いうちからしっかりと鍛えておくことをお勧めします。
(ちなみに最近、骨盤矯正という言葉をよく聞きますが、この骨盤矯正ができるとうたっている運動で主に鍛えられる筋肉こそが骨盤底筋群です。人間の骨盤はとても硬く、簡単に歪んだり矯正できたりするものではないのですが、それを支える筋肉をきたえることで色んな問題を解決できる場合があります。)

骨盤底筋体操は直腸脱を防ぐためにも、また便漏れや尿漏れを防ぐためにもとても重要です、色々な方法がありますが、ここでは基本的な骨盤底筋体操を一つご紹介します

骨盤底筋体操のやり方

トレーニングは毎日、数回に分けて行ってください。
骨盤底筋体操をはじめたからといって、すぐに効果が出るわけではありません。しかし毎日続けていると効果は2-3カ月後に現れるので、根気よく続けることが大切です。


基本姿勢はあお向けです。

  1. 仰向けに寝て足を少し開き膝を立てます。膝の間はこぶしをひとつ分くらい開け、体の力をぬきます。
  2. 尿道・肛門・腟をきゅっと締めたり、緩めたりし、これを2~3回繰り返します。これによって骨盤底筋が鍛えられます。次に肛門を閉めながら膣と尿道も10秒くらいぎゅーっと締めます。締めるというとお尻の周り(臀部)の筋肉を締めてしまう方がいます。そうではなく息を吸いながら、肛門と膣をお腹の上の方に引っ張り上げるように意識しながら力を入れるとうまく力が入ることが多いです。。その後、30秒くらいリラックスします。これを10回ほど繰り返しましょう。
  3. 次に、同じように肛門、膣、尿道を閉める動作をもっと早いテンポで行い、この「キュッ(締める)、パッ(緩める)」を1セットとして、10回繰り返します。
    慣れてきたらだんだんと回数を増やすとよいでしょう。

この1-3を1日数回に分けて5セット以上行います。
基本姿勢でできるようになったら、いろいろな姿勢でやってみましょう。通勤途中や入浴中や家事をしながらでもできるようになるでしょう。

座ってできると通勤電車や仕事の合間などでもできるようになります

直腸脱の治療はどうするの?

いちどなってしまった直腸脱については生活指導や薬だけではなかなか改善しないため、基本的には手術となります。
手術の方法は日本では主に3種類の方法が行われています。

ガント三輪+ティールシュ法

出てしまっている腸を少しずつ玉状に縛っていき、粘膜のたるみをなくしていく事により腸を出なくする手術です。玉状の「絞り結紮」という物をたくさん作るので大仏の頭のような感じになっていきますが、実際には粘膜を縫い縮めていくと、縫い縮めた部分は中に入っていってしまいます。このため、もう一度引っ張りだしてみないと大仏の頭のようになっているところは見えません。
肛門のゆるみの状態に応じて、最後に肛門を締めるために人工物(糸などの場合もありますが、当院では伸縮性のあるゴムや人工じん帯使用することが多いです。)を入れて手術を終わります。
体の状態が良くない方でも、局所麻酔などでも行うことができるのが利点で、当院でもこの方法を採用していますが、あまりにも出ている腸管が多い場合にはできない場合があったり、何年かたつと再発することがあるのが、難点です。ただし、逆に言うと体の負担の少ない手術ですので、何回も再発している直腸脱であっても行うことができます。また、直腸脱のある方は便漏れなどがあることも多いのですが、人工物を入れることによってこちらも改善する場合があります。

デロルメ手術

ガント三輪法と同様にお尻からの手術です。
ガント三輪法が直腸を何回も縛るのに対してデロルメ法では脱出している直腸の粘膜をはがして、筋肉を折りたたんだ形で縫い縮めます。
粘膜をはがす必要があるので、癒着の強くない直腸脱が対象となります。また筋肉を縫い縮められる距離には上限があるので、ガント三輪法と同様にあまり大きく脱出しない直腸脱が適しています。ただし、ガント三輪法よりも重症なものでも対応できます。「大きく脱出する直腸脱」や、「何度も手術して癒着している直腸脱」にはあまり向いていません。

直腸固定術

この手術はおしりではなく、お腹の側から手術をするのが特徴です。
お腹を開けて、もしくは腹腔鏡という内視鏡の一種で、お腹の中から緩んでいる直腸を固定します。
場合によりメッシュという硬い網のような人工物を使い、ゆるんだ直腸を縫って固定します。
利点は再発が少なく、ひどい直腸脱でも対応できる点です。最近は腹腔鏡での手術を行うようになっており、以前と比べて体への負担は少なくなりました。しかし、やはり全身麻酔をかけなければできない手術ではあるので、比較的若い方、元気な方の直腸脱、重い(たくさん腸が出ている)直腸脱に向いた方法です。

直腸脱は比較的高齢な方に起こりやすい病気ですが、若い方も(特に女性は)必ずしも無関係とは言えません。おしりから直腸が出てきてしまう方はもちろんのこと、便や尿が漏れる、便がおしりまで来ているのにうまく出せないなどの症状のある方は一度お近くの肛門科にご相談ください。

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