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赤羽根医院ブログ

痔瘻(じろう)と肛門周囲膿瘍 – お尻が腫れて痛い、しこりができた

2020.05.05

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今回は「痛い」時の話です。
皆さんはお尻が腫れ上がって痛くなった事はありますか?いぼ痔や切れ痔でも痛い時はありますが中でも肛門周囲膿瘍や痔瘻(じろう)はとりわけ「痛い」病気です。
また、痔瘻(じろう)には「あな痔」という通称がありますが、切れ痔やいぼ痔などと比べるとかなりマイナーです。
見つかった時点で基本的には手術をお勧めせざるを得ないという点でも他の痔とは異なっています。

肛門周囲膿瘍・痔瘻ってどんな病気?

肛門周囲膿瘍と痔瘻は同じ病気の違う段階を指したものです。
人間の肛門に近くには肛門陰窩と呼ばれる「くぼみ」が10〜12個ほどあります。このくぼみにばい菌が入って繁殖すると腫れて膿(うみ)のたまりを作ります。これが肛門周囲膿瘍です。肛門周囲膿瘍ができるとお尻は腫れ上がってしまい、座るのも辛いくらいに痛くなってしまうことがあります。溜まった膿は出口を求めていずれ肛門周囲の皮膚に達し、しまいには破裂し膿が排出されます。膿が体外に出てしまえば症状は改善しますが、破裂せずに膿がたまった状況が続くと、激しい痛みだけでなく高熱が出るようになります。こうした状態を放置すると敗血症やショックなど生命に危険が及ぶ重篤な状況に陥ることもあるので、速やかに医療機関を受診して下さい。局所麻酔で皮膚を切開し、膿を出す処置が必要となります。
膿が出ると痛みはかなり良くなることが多いですが、治療はここで終わりというわけではありません。一度肛門周囲膿瘍を起こした後はお尻の横に「あな」が出来てしまいます。この状態を痔瘻と言います。(穴が出来ているのであな痔なのですね。)この痔ろうは自然に治癒したり薬で治ったりすることはありません。
痔瘻ができてしまっている状態では度々腫れたり膿がたまって痛くなったりする事を繰り返します。また、長期に放置すると「あな」の形状が(枝分かれしたり深いところに膿がたまるなど)複雑な形状になったり、がんの原因(痔瘻がん)となる事もあります。このため、痔瘻が出来てしまっている方には通常手術をお勧めします。

痔瘻(じろう)の原因

痔瘻の原因は、まだわかっていないことも多いのですが、下痢しやすい人に多い傾向があります。肛門上皮と直腸粘膜の境目となる歯状線には、肛門陰窩という小さなくぼみが幾つかあります。下痢が起こると、この小さなくぼみに便が入りやすくなります。また肛門の緊張が強く肛門内圧が高い人も、便が肛門陰窩に侵入しやすくなる要因になります。通常、便が入っても健康な状態であれば感染を起こしませんが、免疫力が落ちていると肛門陰窩の奥にある肛門腺というところで細菌が繁殖し、感染が起きて肛門周囲膿瘍を発症します。 肛門周囲膿瘍が進行して膿が管状のトンネルを作り、皮膚に出口を作ってしまうと痔ろうとなります。また、性差については男性の方が多い傾向にあります。
下痢しやすい方、肛門括約筋の緊張が強い方、糖尿病やストレス、過度の飲酒、喫煙などにより免疫力が低下している方は、痔ろうになりやすいと言えます。また、裂肛(切れ痔)から痔瘻が発生することもあります。(裂肛痔瘻といいます。)特殊なケースとして、潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)に合併することもあります。

肛門周囲膿瘍・痔瘻の症状

痛みや熱を伴う肛門周囲の腫れは肛門周囲膿瘍の段階でみられますが、皮膚に穴が開いて膿が出てしまうか、医療機関で切開排膿の処置を受けるとこうした症状は治まります。ただし痔瘻になっても、肛門周囲膿瘍が再発すると痛みなどの症状が現れます。激しい痛みを生じて座れないことや、38-39度の高い熱が出ることもあります。

肛門周囲膿瘍

痛み・腫れ・熱感・発熱 など

痔瘻

   皮膚の穴から膿が出て下着が汚れる
   持続する鈍痛や痒み
   肛門の周りにしこりのような物が触れる

放置すると痔瘻は複雑化することも

痔瘻を放置していると、管状の瘻管(トンネル)が枝分かれして複雑に伸びていってしまうことがあります。肛門周囲には静脈叢という細かい毛細血管が縦横に走っており、肛門を締める括約筋があってデリケートな機能を果たしています。そのため痔ろうの瘻管が複雑に伸びると、こうした重要な組織を傷付け、肛門の機能を果たせなくなって不便を感じることが多くなります。また、トンネルの形が複雑になれば治療(手術)の難易度が高くなるだけでなく、術後のダメージ(肛門機能の低下)も大きくなります。
また、長期にわたって放置しているとそこからがんが発生してしまう事もあるため、痔ろうが見つかった場合は早めの治療をお勧めします。

痔瘻の治療は

痔瘻は手術でしか治すことができません。痔ろうの手術では、瘻管の長さや位置、枝分かれの状態、数、原発巣の場所などによって適した手法を選択する必要があります。そして実際の手術では確実に原発巣まで切除することが求められるため、繊細で正確な技術、経験、知識を持った医師に相談することが重要です。
当院では、痔ろうの手術を数多く行ってきた専門医が、その経験をもとに手術を行っています。すべて日帰り手術となります。

瘻管切開開放術(lay open法)

後方(背中側)の浅い痔ろうや膿みのたまる場所が比較的浅い痔ろうに適した手法です。痔瘻のトンネルを切り開く、もしくはトンネル自体を取ってしまい、取ったあとの場所を縫い合わせずに傷をそのままにするという手術です。(実際には単に切りっぱなしにするだけでなく傷が治りやすいように傷の形を整えます。)痔瘻の管は硬いのですが、電気メスでとろうとすると簡単に切れてしまう時もあるので痔瘻を取ってしまう場合にはできるだけ電気メスを使用せずにハサミでとっていきます。また、痔瘻の管を切り開く場合にはゾンデという棒状の道具を使うのですが、無理やりトンネルにゾンデを通そうとすると、新たな痔瘻を作ってしまう場合があるので、組織に傷をつけないように優しく通してあげる必要があります。
肛門を締める筋肉(肛門括約筋)を一部切らないといけないという点が短所になりますが、肛門の後ろや浅い場所に膿がたまっている痔ろうでは括約筋を多少切開しても機能的に問題が起こりにくいとされています。この手術は根治性が高く、再発率は約1~2%とかなり低く抑えられます。

括約筋温存術(くりぬき法)

トンネル状の瘻管をくりぬき、原発口(トンネルの入口)を閉鎖する手法です。括約筋が切断されないため、肛門機能の温存に優れています。ただし、瘻管を解放しない為、トンネルが再開通したり、くり抜いたトンネルの中に再び膿がたまるなどの事が起こる場合があり、lay open法よりも再発率が高いのが難点です。(15%程度と言われています。)お腹側や側方の痔ろう、肛門から離れたところまで瘻管が伸びてしまった痔ろうに行われることが多い術式です。

シートン法

瘻管(痔瘻によってできるあな)に医療用の輪ゴムや紐を通し、少しずつ縛っていき、時間をかけて(2~4か月)瘻管および括約筋を切開する方法です。ゆっくり少しずつ切開するため、括約筋は切離と治癒が同時に進行し、肛門機能へのダメージが最小限に抑えられます。肛門の変形が少ないという利点もあります。他の術式と同様ゾンデという棒状の道具をトンネルに通して手術をします。管の走行がわかりづらい場合は過酸化水素水(消毒薬として使われます。血液と反応して酸素が出ます)を管に注入したりする場合もあります。やはり、新たな痔瘻を作らないように優しくゾンデを通すようにしなければなりません。
難点としては治療期間がかなり長いことがあります。治療中は何度か輪ゴム(あるいは紐)を締め直す必要があり、その際に多少の痛みや違和感が生じることがあります。特に傷の治りが通常の患者さんより遅く、多数の痔瘻ができる事のあるクローン病という病気の患者さんの痔瘻などで選択されることが多いです。

これらが一般的に行われている術式です。
当院では、個々の患者様の痔ろうの状態に応じて、術式を選択しております。それぞれの術式の利点と欠点を補うために、各術式を組み合わせた術式を選択することもあります。詳細については、診察の結果に応じて決定し、術前に説明いたします。
また、術後は、2~3日の自宅療養を要することもあります。痔ろうの状態や術式によって変わるので、詳細は術前説明の際に医師にご確認ください。

肛門周囲膿瘍はかなり痛いだけでなく、あまり放置しておくと敗血症になり、高い熱が出てしまったりすることもあります。お尻の強い痛みが出たときには我慢せず、早めに肛門科にかかり、切開排膿(うみを出す)などの処置を受けることをお勧めします。
また、痔ろうは腫れているときはかなり痛いものの、一度うみが出てしまうとあまり症状を感じなくなってしまい、そのままにされる方も多くおられます。しかし痔ろうができたまま放っておくと繰り返し腫れたりするだけでなく、深い場所に膿がたまって治療が大変になったり、痔ろう癌と呼ばれる癌ができてしまう場合もあります。切開をした後に痔瘻が残っている場合には早めに手術を行うことをお勧めします。

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